【映画感想】リズと青い鳥(ネタバレあり)

2018年7月9日

これは、のぞみとみぞれが真の友達になっていく物語なのです。
みぞれの飛翔とのぞみの堕天。これをもってようやく対等な友達としての関係になるのです。

スポンサードリンク



考察

ふたりの関係とは

これについて疑問があるでしょう。もともと二人は友達同士ではないか、と。
しかし二人の関係が友達として見ると、どうも不自然な点があります。
例えば、冒頭シーン。二人は校門で待ち合わせて一緒に音楽室へ向かいます。
この時二人並んで歩くのではなく、のぞみが数歩先をきびきびと歩き、のぞみはその後ろをついていきます。
この時ポイントなのは、のぞみもみぞれも相手に歩調を合わす様子がないんです。
この距離感が私たちにとって普通だと、二人ともが思っている。無意識のうちにお互い、私たちは対等ではない、と思っているんです。
のぞみが先でみぞれが後。のぞみが上でみぞれが下。象徴するかのように冒頭の音楽室に向かうシーンで、のぞみが階段の上からみぞれに向かって呼びかけるシーンが出てきます。
(これは私の予想ですが、のぞみは基本的に優しい面倒見のいい子なので、出会った当初はのぞみのペースに合わせてあげようとしたんじゃないかと思うんです。
しかし何度ペースを合わせようとしてもみぞれの方から後ろに下がってしまう。のぞみは根負けして、みぞれがいいんだったらこの距離感でいいよーってなったんじゃないかと思いました。)

私は友達って対等な関係だと思っているので、この二人の間柄が友達ということに疑問をもちました。
友達というよりは、母と子のほうがしっくりくるんです。

みぞれは中学時代、のぞみに吹部に誘われて、オーボエを始めます。みぞれは自分の意思をはっきり主張することができない子なので(のぞみに関することには行動的になるのにね。)とっつきにくくて、今までかまってくれる人がいなかったんだと思うんです。そんなみぞれの前にはじめて現れた、自分に関わろうとしてくれる人、のぞみ。(のぞみは多分、みぞれ自身に興味があったわけでなくて、人集めのためにやみくもに声かけてたんだろうけど)みぞれの周りにあった殻を破ってくれたのぞみを母のように見るようになったんだと思います。まるで鳥の刷り込みのように。「のぞみが私の全部なの」みぞれのこの言葉も、赤ちゃんであるみぞれの世界はお母さんであるのぞみがすべて、というように変換するとしっくりきます。

一方ののぞみ。のぞみは優しい子だから、ちょっと不思議ちゃんなみぞれのことをいつもフォローしてあげます。図書室の本の返却期限が切れてしまったみぞれをさりげなくフォローしてあげたり、遊びに行くのに誘ったり。みぞれものぞみの言うことを拒否することもなく従順についてきます。そんな関係が中学から高校まで6年間続いたわけだから、自分がいないとみぞれは何もできない、それくらい思うようになっちゃたんじゃないかと思いました。この慢心、のぞみがみぞれを見下してるんじゃなくて、あくまで子供を保護する母のような心だと思ってます。

のぞみは無口、みぞれは多弁。ぱっと見、のぞみの方がわかりやすくて、みぞれの方が何を考えているかわからない。ですが、実は逆で、みぞれの思いはいつだって単純で「のぞみがすべて。のぞみとずっと一緒にいたい。」それだけなんです。一方のぞみは「私、ほんとに音大行きたいのかな」と言ってみたり、自分でも自分の気持ちがわかっていない、迷える思春期の女の子そのものです。のぞみは一見強い子に見えるんですけど、実は普通の女の子なんです。自分でも「わたし、みぞれが思っているような人間じゃないよ」と言うように、平凡な人間だということをのぞみ自身わかっているんです。

関係性の変化

そんな二人の関係は徐々に変わっていきます。みぞれに自我が生まれてくるのです。のぞみ以外にもみぞれに積極的に関わろうとする子が現れます。オーボエパートの後輩、りりかちゃんです。りりかちゃんも最初はみぞれ自身に興味をもって関わろうとした訳ではなく、同じオーボエパートとして、後輩として、みぞれとコミュニケーションをとっておかないと良い音楽を奏でられないから、つまり仕事のためにみぞれと関わろうとします。その熱心さにみぞれの心が動かされ、二人が通じ合ったとき、りりかちゃんは仕事としての関わりではなく、尊敬する先輩として、心を開いていきます。
この一連の、りりかちゃんとみぞれの関わりのシーンが私は一番好きかもしれません。みぞれが心を開いていく様子がうれしいですね。大学に行って、いろんな人と関わって、どんどんこの子は変わっていけるんじゃないか、もっとみぞれの世界を広げてほしい、そう期待してしまいます。

のぞみとみぞれの心のズレを表した場面はたくさんありますが、私が好きなのはのぞみがみぞれをプールに誘ったとき、みぞれが「他の子も誘ってもいい?」と聞き返したときののぞみの驚いたような顔です。この時のぞみは、自分の知っているみぞれの行動を超えたみぞれを見て、驚いたんだと思います。さながらお母さんが子供を保育園に預けて、最初は泣きじゃくっていたのに、すぐに保育園の生活に慣れて、友達もできて楽しそうに遊んでいた時のような気持ち。我が子の成長ぶりに驚くと同時に、つい最近までお母さんにまとわりついてばっかりだったのに、と少しの嫉妬心が同居する複雑な感情です。

さて劇中最大の山場であるみぞれ覚醒後のソロ演奏シーン。ここでついにみぞれが飛翔し、のぞみが地に下ろされます。のぞみははっきりと気づいてしまいます。みぞれの方が音楽の才能を持っていたこと、平凡な自分にみぞれが合わせてくれていたこと、そして自分がみぞれのことを過小評価してしまっていたことに自分の傲慢さを感じて嫌気がさしていたんじゃないかな。のぞみにとって残酷なシーンです。

挫折、そして

そして大好きのハグを経て、ラストシーン。映画冒頭のシーンと同じく、のぞみとみぞれが歩くシーンです。この時もまだ二人は並んで歩いていません。
しかし途中、階段で立ち止まるシーンでは、前がのぞみ、後ろがみぞれなのは変わりませんが、上下関係は逆転していて、上にみぞれ、下にのぞみという配置になっていますす。歩く時の前後の距離感に表される二人の関係性は簡単に変化するものではない。けれど映画での出来事で少しお互いに対する見方が変わったように、その関係性は不変ではなく、二人がこれからたくさんの世界を知るにつれて変わっていくのではと思わされます。

願わくば、みぞれが音大で成長して自信をつけて、のぞみと並んで歩けるくらいに変化してほしいなと思います。
のぞみだけが世界じゃないんだよー!

感想

私じつは百合要素多めな作品って苦手なんです。(ユーフォ1期の久美子麗奈の山の上でのやりとりとかもちょっとやりすぎじゃ…って思ってるタイプ)
だから、映画館でリズ鳥の予告編を見たときは「苦手な百合っぽい映画だなー」と感じて完全にノーマークでした。
ですが公開されると好評な噂が流れてきまして、見に行くつもりがなかったからこそ映画のネタバレ感想をガンガン見に行きましたw
そうするとどうも百合だけの映画じゃないぞというのがわかってきて、見に行くことにしたのです。

で、リズ鳥は百合映画というよりは、青春時代の揺れる心…憧れ、嫉妬、挫折などを丁寧に描いた映画と言えるでしょう。
のぞみは「物語はハッピーエンドがいいよ」と言いますが、私はただのハッピーエンドよりは登場人物が悩み、乗り越え、時には諦める、そんな現実味がある物語が好きなんです。リズ鳥はリアリティある青春映画を見たい人におすすめです。